釦の話
洋服を構成する大半は、
「服地」であることに間違いはありません。
しかしながら、その一着を作り上げるためには、
服地の他にも、様々な材料が必要となります。
私たちは、
これらの材料を総称して、「附属品」と呼んでいます。
とはいえ、その附属品にも、また実に沢山の種類が存在します。
芯、裏地、釦…
そして、その一つひとつは、
洋服を美しい形に整えるものであったり、
着心地良くお召し頂くためのものであったり、
装飾品としての大切な役割を担うものでもあり、
例え、表からは見えぬものだとしても、
洋服創りにおいて、
決して軽視するわけにはいかないものばかりです。
そのうち、本日は、
「釦」に是非スポットライトを当ててみたいと思います。
洋服に用いられる釦の主な大きさは、
袖釦は13~15mm、前釦は18mm程度。
(コート用の前釦は、22mm程度です。)
大変小さいながらも、
洋服にとっては、大切な装飾品であり、
また、その「顔」を決める重要な要素の一つでもあります。
正に、留める釦によって、洋服全体の印象もガラリと変わります。
プラスティック、金属や金銀等のメタル、
ココナッツの実をくり貫いたナット、レザー(革)、
水牛、貝。
天然素材から、人工のものに至るまで
今では実に様々な素材によって、釦が作られています。
当時学生であった私も、(素人ながらに…)
父の洋服に留めてあった本水牛釦を目にする度、
その存在感と、美しさに圧倒されていたものでした。
“釦の王様”と呼ばれる、
本水牛釦の堂々とした佇まいは、
洋服屋となった今でも、
お客様のお召しになる洋服の「格」を引き上げています。
(フリースタイルでは、更に厚みを持たせた特注の本水牛釦を用いています。)
ジャケットや、作りの柔らかなカジュアルなセットアップには、
本水牛釦の他にも、
ナットやメタル釦等も、肩肘の張らない雰囲気を良く演出してくれます。
釦一つ取り換えただけで、
洋服全体の格は、ぐっと上がります。
細やかながら、
「釦」への拘りもまた、
大人の装いの「粋」と言えるのではないでしょうか。