アルパカの裏地
祖父の洋服を補正して、またお召しになりたい、とお客様からお預かりした一着。
あれこれと目を通していますと、
裏地には、今では大変珍しい「アルパカ」を使っていらっしゃいました。
父にも、このことを話したところ、
昔は、裏地としても、よくアルパカ地が使われていたそうです。
アルパカ地には、上毛と下毛が在り、(カシミア地にも良く似た特徴が在ります)
下毛はトロリと柔らかく、シルクのように美しい光沢を放ちます。
また、非常に軽く保温性に優れるため、冬のコート地として大変重宝されています。
反対に、上毛は外気に触れる表面の毛であるため、
固く、コシが在るといった印象です。
(同じアルパカ地、異なる表情。)
この上毛が、今回の裏地として使われていた、というわけです。
時代の移り変わりに影響されることなく、良いものを長く愛用する。
スーツは、単なる仕事着や消耗品ではなく、
いつの時代もお客様ご自身を表現するツールであるのだと、
改めて実感したひと時でした。